兄遊び

妹は、ぼくを驚かすのが好きだ。
むかしからそうだ。
いつも、もうだまされないぞ、と思うけど、
分かっていても驚いてしまう。
昨日も、僕が家に帰ってきたとき、
「ただいまー」と言っても返事がなくて、
「いつものパターンだ」と思っていろんなところを探しても見つからなくて、
あきらめて自分の部屋に入ったところで後ろから「わっ!!!」って……。
分かってたはずなのに死ぬほど驚いてビクッとしてしまう。
爆笑の妹。
今日は、ちゃんと出迎えてくれた。
でも、なんだか妙に真面目な顔。
妹が、ちょっとだけ笑って顔を近づけてくる。
僕はちょっと身構えてしまう。
僕のすぐ目の前で、
上目遣いになって、妹が言う。

DL
そのとき僕がどんな顔をしていたかは、
よくわからない。
「な、なにを……?」
僕の返事は無視で、
きびすを返し妹は居間に駆けていく。
靴を脱ぐのにやたら手間取った。
居間に入ると、僕の顔を見た妹が、
今度は階段に走っていく。
とんっ とんっ とんっ
と、軽い音で駆け上がる。
階上を見上げると、
上から妹が嬉しそうに覗き込んでいる。
すぐに、妹は振り向いて2階の廊下の奥へ向かう。
妹が自分の部屋に入る音が聞こえる。
僕は、よくわからないまま階段を上がる。
ぎし ぎし ぎし
妹の部屋の前で立ち止まる。
部屋の中では、妹が息を潜めて僕の動きを伺っている。
きっと、僕を驚かせようとしているに違いない。
だまされないぞ だまされないぞ
ドアノブに手をかける。

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